2024年12月7日(土)から12月31日(火)にかけて、ディズニーコレクション「Disney Collection by Mika Pikazo」を開催。
本特集記事では、イラストレーターMika Pikazoさんにディズニー作品へのリスペクトを胸にもがき続けた制作期間や、コレクションを通して出会う方々から得た新たな気付きについて、たっぷり語っていただきました。
Mika Pikazo
イラストレ-ター
1993年東京都出身
高校卒業後、南米の映像技術や広告デザイン、音楽に興味を持ち、約2年半ブラジルへ移住。その後帰国しイラストレーターとして活動を開始。キャラクターデザイン、イラストレーションに加え、2022年よりアニメーション制作も始める人気イラストレーター。
どこまで描いても、追いつけない。大ファンだからこその距離感
─Mika Pikazoさんにとって、ディズニー作品はどんな存在ですか?
Mika Pikazo :エンターテインメントを究極的に突き詰めたクリエイター達の結晶だなと思っています。やっぱり、ディズニー作品は人間の生き方とか自然の描き方に対する追及がすごいですね。作品を観返す度に思うのは、私がどこまで描き続けてもこんなに凄い表現って中々出来ないなって。それくらい沢山のクリエイターがその時代ごとに集まってつくり続けた先に到達できるエンターテインメントだと思っています。
─「Disney Collection by Mika Pikazo」の開催が決まったときはどんな気持ちでしたか?
Mika Pikazo :こんなお話がこの世に存在するのか?と驚きました。即答で「是非描きたいです!」と回答しました。小さい頃からディズニー作品に触れているし、今でも新作が出たら映画館に観に行くので、本当に嬉しいです。出かければ必ず一度はディズニー作品を目にする、世界的コンテンツですね。
―Mika Pikazoさん自身がディズニー作品のファンなんですね。そんな中でも、今回描いたキャラクター・プリンセスの中で、コレクションをきっかけに初めて観た作品はありますか?
Mika Pikazo :今回を機に初めて観た作品はないです。コレクションがはじまる前から全て観ていました。ただ、この機会に改めて観返して、小さい子供の頃に観た時と感動するポイントがすごく違うなと思いました。
―例えば、どのように違いましたか?
Mika Pikazo :小さい頃は映画の中に出てくる魔法の表現だったり、プリンセスが華やかに描かれるところが綺麗だなと思っていました。改めて観ると、プリンセスが強く生きていく姿が本当に格好良くて…。困難があっても夢に向かって頑張って生きていくところに、グッと来るものがありましたね。
―コレクションの制作に取り掛かる際に、意識したところはありますか?
Mika Pikazo :まずは、Mika Pikazoとしての表現よりも、ディズニーの世界をきちんと表現したいと思いました。そのために、何度も何度も描かせていただく作品を観返しました。
また、プリンセスは、一枚のイラストでそのストーリーを表すかのような抽象的な、1枚に集約された作品を目指しました。プリンセスの性格はもちろん、背景には映画に出てくる他のキャラクターや物語のキーとなる場所を取り入れています。
Mika Pikazoだからこそ、描けるイラストって?
―ミッキーマウス・ミニーマウスなどのディズニーキャラクターは、どのような想いを込めて描きましたか?
Mika Pikazo :ミッキー&フレンズを好きな女の子たちというコンセプトでTOKYO GIRLを描きました。なぜTOKYO GIRLと名付けたかというと、日本のイラストレーターとして漫画やアニメに通ずるようなキャラクターデザインを落とし込みたかったからです。現代の渋谷や原宿にいそうで、ディズニーが好きな女の子を想像しながらつくりました。
―スカートの子もいれば、ズボンの子もいる。それぞれのファッションに個性が出ていますね。
Mika Pikazo :ミッキーとミニーが好きなTOKYO GIRLに関しては、ファッションに和の要素を取り入れています。ミッキーのTOKYO GIRLは日本の伝統的な下駄をモチーフにした靴を 履いていたり、ミニーのTOKYO GIRLは着物とワンピースを掛け合わせたファッションを着ています。そこにフリルをつけてキュートにしてみたり…いろいろな要素を入れ込みました。
―描き始めてから、難しいなと思った場面はありましたか?
Mika Pikazo :やっぱり、大尊敬する作品たちなので、上手く表現できるかずっとプレッシャーはありましたね。70年~80年前につくられて、既に完成されている印象があったので、クライアントワークのイラストを描き始めて10年くらいしか経っていない私は果たして描き切ることが出来るのかと思っていました。正直、今まで取り組んできたプロジェクトの中で、一番悩むことが多かったですね。いちクリエイターとして、本当に誉れに感じる挑戦でした。正直、ディズニーで好きな作品が他にもたくさんあるので、もっと描きたい、あのキャラクターも描きたかったな…あのキャラを描くとしたらどう表現しようかな…という気持ちはあります。
―そんな制作過程の中で、ご自身の殻を破ることが出来たところはありますか?
Mika Pikazo :なんだろうな…。普段描いているオリジナルのイラストとは異なって、世界観が出来上がっているものを私なりに追い求めることが希望であり、迷いというか…。 描き切るまでに、色々な感情が沸き上がってきましたね。その度にディズニー作品やウォルト・ディズニーさんのドキュメンタリーを観て、クリエイターとして背中を押してもらっていました。作品の中で生きている彼らを観ると心の奥底から熱いものが込み上げてきます。本当に輝いているからです。楽しみながら、そして迷いながら エンターテインメントというものをどう表現するのか向き合うことが出来ました。私にとって一生忘れられないコレクションだったなと思います。
感想を受け止めながら、ディズニーファンと同じ熱量で盛り上がった
―SHIBUYA TSUTAYAでの開催が決まった際に、率直にどう思われましたか?
Mika Pikazo :渋谷って言ったらスクランブル交差点があって、SHIBUYA TSUTAYAがあって…。渋谷を代表する場所だなと思っています。小さい頃から、渋谷に来るのが好きで、初めて個展を開催した場所も渋谷です。今回のコレクションでは、SHIBUYA TSUTAYAの特性上、今まで個展を開催した際には中々出会えなかった方とお話することが出来ました。家族連れだったり、日本に観光で遊びに来ている海外の方だったり。会場で流れているBGMに合わせて歌っている海外のお客さんもいたりして、とても賑やな雰囲気です。いままで観たことのないハッピーな空間になっていました。あとは、私のことは知らないけれど、ディズニー作品が好きだから来たって方ともお会いしました。それがすごく嬉しいのです。「このシーンがすごく好きで、こんな思い出があります。」とか「プリンセスだけではなく、横にいるキャラクターも描いてくれて嬉しい。」とか、感想を聞かせてもらいながら、一緒になって盛り上がりました。作品の感想を聞けるのは楽しかったです。
―Mika Pikazoさんのイラストをきっかけとして、ディズニー作品を観返したいと思ってもらえたら嬉しいですよね。
Mika Pikazo :はい。物語の核となるキャラクターを敢えて出さないイラストもあったりするので、コレクションにお越しになった方やイラストを観てくださった方には、ぜひそのディズニー作品を楽しんで欲しいです。
―海外の方と話して、新たな気付きはありましたか?
Mika Pikazo :和の要素として、日本の伝統的な幾何学模様を入れていたのですが、「ミッキーが日本の文化と融合していて、良かった。」と海外の方にとても喜んでもらえました。制作時に意識したので、気づいてもらえて嬉しかったです。
―何度もMika Pikazoさんの個展に足を運んでくれるファンの方とはどんなお話をしましたか?
Mika Pikazo :私はカラフルな色を使うことが多いのですが、「ディズニー作品とMika Pikazoの表現がマッチしていた。」と言っていただけて、嬉しかったです。元々自分のファンでイラストを追ってくださっていた方が、「ディズニー好きな家族が自分より先に今回のコレクションをニュースで知って、教えてくれました」と伝えてくれたり、私のイラストが好きな彼氏とディズニー作品が好きな彼女がデートで遊びに来てくれたり…。ディズニー作品だからこその、ひろがりをすごい感じましたね。
―来場者が書くメッセージボードも日に日に埋まっていき、最終日にはすごい量になっていましたね。
Mika Pikazo : 私もびっくりしました。会場に行くたびに、いつも眺めていました。大きなメッセージボードの真ん中にミッキーのTOKYO GIRLのイラストがあるのですが、その周りがどんどん埋まっていって…最終日にはイラストも顔しか見えない状態になっていて、メッセージの数々もいろんな言語で書かれていて、愛を感じました。
「大好きな作品を描けて、夢が叶ってしまったような感覚」ゴールテープを超えた先で心に刻みたいこと
―Mika Pikazoさんにとって、表現し続けることの背中を押してくれるディズニー作品はありますか?
Mika Pikazo :小さい頃に観たティム・バートン監督の映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が好きです。ストップモーション・アニメーション技法という、静止している物体をカメラで一コマずつ撮影した作品で、ハロウィンタウンの王様「ジャック・スケリントン」がクリスマスの世界に心を奪われ、自分達でクリスマスを作りあげようと計画をする物語です。キャラクターを一コマずつ撮影するクリエイターの方達の熱量だけではなく、物語の中でいたずらをして人々を驚かせ困らせてばかりのハロウィンの住人たちが、人々を喜ばせる陽気なクリスマスに憧れるのが、子供ながらに衝撃でした。“喜ばせる”という最終地点のために、「ハロウィンタウン」の住人と「クリスマス」の住人は全く違った思考で動いていて。でも、どちらも必死にエンターテインメントを届けようとしているのが、すごい刺さりました。誰かを想って一年に一回のイベントを総出で作り上げようとしてるのです。
―目指す先は一緒だけど、アプローチ方法が違うのは面白いですね。
Mika Pikazo :同じクリエイティブでも、喜ぶ人もいれば悲しむ人もいる。誰かを楽しませるものは誰かを傷つける。色々な人間がいるし、好みも人それぞれだなと感じた映画でした。自分の作品が好きじゃないという人のこともたまに考えます。どこから好きや嫌いは生まれるのか、楽しいとは、悲しいとは、この複雑な感情はなんなのかと。
―常にエンターテインメントに向き合い続けているMika Pikazoさんですが、実際にイラストレーターとして活動をはじめて、感じた葛藤はありますか?
Mika Pikazo :私は作るものに理想を高く持ちすぎてしまうので、今の自分じゃ表現できないってなった時にすごく悩みますし、迷いますね。誰かに見せたら「どこが変わったの?」みたいな細かい部分でもめちゃくちゃこだわってしまいます。本当に諦めが悪い。そうなったら誰かが止めても描いてしまう。その諦めの悪い部分がイラストに出ちゃいますね。
―納得して筆をおくのが難しいですね。
Mika Pikazo :ただ、ここまでだって決めるのもプロフェッショナルな仕事ではあるので…。理想を追い求めることと、ここで完成だと決めることの戦いだと思っています。
―ディズニーコレクションを経て、新たに挑戦したいことはありますか?
Mika Pikazo :そうですね。私は貪欲というか、やりたいことをたくさん抱えて走り続けてきました。どこまで描いても満たされることはない。もっと上手くなりたい。表現したい。今回のコレクションでは、そんな私でも「ああ、こんなことがついに叶ってしまうなんて。」って気持ちがすごくありましたね。お話が来てからも、動揺していました。だからこそ、ずっと自分自身に言い聞かせてきたもっと頑張らなきゃみたいな気持ちから自由になることを心掛けました。このディズニーコレクションを描かせていただくなかで、「ああ、もっと好きに描いていいんだ。」って思うようになりました。頭の中に浮かんでくるコンセプトを、手を動かしながらどんどん表現していきたいです。イラストもそうですし、アニメーションや空間もつくりたいので、どんな形にするかは一つに絞れないです。それこそ、ディズニーは可能性と自由を見せてくれるエンターテインメントですから、このコレクションを通して、強く影響を受けました。
―ありがとうございます。では、最後に“好き”を仕事にしたいと思っている人に、今のMika Pikazoさんだからこそ、伝えたい想いはありますか?
Mika Pikazo :ディズニーコレクションをやらせてもらうにあたって、一つ夢が叶ったなと思いました。小さい頃に憧れたものを描くことが出来て、すごく嬉しいです。だからこそ、諦めないって本当に大事だなって。生きていく中で辛くても、苦しくても、心の中に湧き上がる希望を見つける。希望を抱くことを諦めない。ものをつくるだけじゃない、作ることは人生の中にある一つの手段だと思います。学校の勉強でもお仕事でも、やりたいことに向かって一歩踏み出してみるのは、大事だなと思いました。小さい頃に憧れた何かに、数十年経って触れることが出来るかもしれないので、そういう意味では“好き”という感情の持つパワーを忘れないで欲しいです。自分の心の中に湧き上がるものはずっと自分自身と共にある。 子供の頃も、大人になった今も、“好きなこと”は自分の人生を支えてくれるのです。
各SNSで2024年12月7日(土)から12月31日(火)にかけて開催したディズニーコレクション「Disney Collection by Mika Pikazo」の様子をご覧いただけます。
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